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2011年8月16日

原発損害の中間指針でました。

8月5日、原子力損害賠償紛争審査会が「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定に関する中間指針」を発表しました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/1309452.htm

今回の福島原発事故による損害について、賠償されるべき範囲の一応の基準が示されたものといえます。

 

この審査会は、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)第18条に規定があり、同条2項にその役割として、2号「原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定めること」と規定されています。

ですから、この指針は、審査会自身が2項1号による「和解の仲介」を行うために設置される、原子力損害賠償紛争解決センターにおける基準に止まらず、裁判での解決にも大きな影響を及ぼし、東京電力が自ら支払いに応じるか否かを決める際の拠所にもなるものです。

但し、あくまで、事故が未だ収束しない段階での「中間」指針ですから、「対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものでは」ありません。

また、損害額については、現実の損害額が証明された場合には増額も認め、他方、証明の程度を緩和して立証の負担を軽減するなど、柔軟な対応も予定されています。

 

評価されているのは、一般論的ながら、風評被害(「第7 いわゆる風評被害について」)や間接被害(「第8 いわゆる間接被害について」)も認められたことです。

ここで「風評被害」とは「報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念した消費者または取引先により当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等をされたために生じた被害を意味するものとする」として、危険性の懸念の一般的な基準としては、「平均的・一般的な人を基準として(懸念し敬遠する心理が)合理性を有していると認められる場合」としています。

「間接被害」とは、政府等の指示等により直接に損害を受けた被害者(指針の第3?7で賠償の対象と認める損害の被害者で「第一次被害者」と言っています)と一定の経済的関係にあった第三者に生じた被害を意味するとしています。但し、間接被害は、第一次被害者との取引に代替性がない場合にしか相当因果関係が認められません。しかも、「事業者には、一般に、取引におけるリスクを分散する取組みをあらかじめ講じておくことが期待される」ことを理由に、代替性がないことは、そのような事前のリスク分散が不可能又は著しく困難な場合に限られます。

 

今回の原発事故のような広範かつ大量な賠償請求の発生は、日本の裁判所も社会も今までに経験したことのない事態です。裁判はどうしても時間や費用や労力がかかります。

弁護士会は現在、精力的に法律相談活動を展開していますが、さらに、原発損害賠償紛争解決のためのADR(裁判外紛争解決機関)を大規模に設置すべきと思います。中間指針も上記のように、実際の適用では、解釈が必要だったり、実情に応じて柔軟に運用する必要があります。そういう機能を発揮できるADRを設置できるのは、弁護士会以外には無いと思うからです。


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