人も自然も輝く未来に

ブログ

2011年9月9日

土壌汚染の判例 2題

 東京地裁で今年1月20日、土壌汚染対策法を前提とした売主の瑕疵担保責任(民法570条)を認める判決がありました。(判例時報2111号48頁に掲載されています。)

また、今年5月31日には、岡山県の小鳥が丘団地の土壌汚染問題について、岡山地裁は、売主・仲介業者の説明義務違反による損害賠償責任を認めました。(まだ、公刊されていないようです。)

 

東京地裁の事案は、被告が、平成18年11月、製缶業者に賃貸していた土地を、マンション建設予定の原告に、代金8億0726万円で売り渡したのですが、原告が、平成20年5月に土壌汚染調査をしたところ、指定基準値を超える六価クロム及び鉛が検出された、というものです。被告は、契約前の平成18年10月と、契約後引渡し前の平成19年8月の2回土壌汚染調査をしており、環境基準値以上の有害物質が確認されていませんでした。原告の調査は、土壌汚染対策法に基づくものでしたが、被告の調査は、千葉県残土条例に基づくものでした。

判決は、「本件売買契約時において、(土壌汚染対策法の)指定基準が定められており、指定基準を超えた六価クロム及び鉛が本件土地に含まれていた以上、(略)人の健康に係る被害を生ずるおそれがあることは明らかであるから(略)本件土地が、取引において一般的に要求される水準を基準とした場合にその種類のものとして通常有すべき性質を欠いていることは明らかである。よって、本件汚染は瑕疵にあたる」 「本件汚染は、本件土壌調査一及び二(注:被告の調査)によっても発見されなかったものである以上、通常人が買主になった場合に普通の注意を用いても発見できない瑕疵(隠れた瑕疵)に該当する」として、売主である被告の瑕疵担保責任を認め、原告が支出した土壌汚染対策工事費用1470万円の損害賠償請求を認容しました。

 

土壌汚染判例といえば、昨年6月1日の最高裁判例があります。これは、売主の瑕疵担保責任を認めませんでした。この判決文の「人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが、特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない。」なんてクダリを読むと、最高裁はそもそも土壌汚染を土地の瑕疵と認めないようにも読めます。土壌汚染対策法違反の汚染があっても、瑕疵担保責任での裁判はできなくなったという受け止めもありました。

しかし、私は、この最高裁判例の土壌汚染判例としての射程範囲はかなり狭いと考えています。

理由は、事案が特殊だからです。先ず、問題になった汚染物質がフッ素です。六価クロムや鉛に比べ、フッ素の「毒性」については意見が分かれているようです(毒性は専門でないので)。さらに、この事案では、買主が契約時にフッ素の基準値以上の存在を知り、かつ認容したうえで、購入していました。その後にフッ素が土壌環境基準や都道汚染対策法の対象物質になり、転売等先に拒絶されたという事情もあります。

 

最高裁判例に比べ、今回の東京地裁判例は、土壌汚染に対する世間一般の感覚に合致した、まともな判断だと思います。控訴されているので、まだどうなるかわかりませんが、売買契約後に土壌汚染(土壌汚染対策法の指定基準を超えるもの)が判明し、汚染原因者が第三者あるいは不明という場合には、この東京地裁判例を先例にして良いと思います。

 

小鳥が丘団地の事件は、損害賠償を請求した法的理由が債務不履行責任(いわゆる契約違反です)で、瑕疵担保責任ではありません。瑕疵担保責任と債務不履行責任は、法律要件が異なり、それぞれ使いやすさ使いにくさがあります。

岡山地裁の判決は、被告が宅地分譲するにあたり、「地中に廃白土、汚泥、ひいてはベンゼン、トリクロロエチレン及び油分が存在する可能性があるとの疑いを抱きうるとまではいえようが」としながら、実際に地中にこれら物質が「含まれていたことについて認識することができたということはできない」としました。これに基づき、原告らが主張する、宅地造成すべきでなかったのに造成して販売したという過失や違法性、汚染物質を取り除いて宅地造成すべきであったのに不十分な対策しかしなかったことの過失や違法性、は認めず、売主または仲介業者として本件分譲地の履歴等を説明すべきであったのにしなかったという説明義務違反を認め、土地建物購入代金の半額を損害と認めて損害賠償請求を認容しました。但し、頭痛や湿疹などの健康被害については、専門委員会意見を理由に因果関係を否定し、認めませんでした。

 

土壌汚染対策法が平成15年に施行され、一昨年の改正を経て、すでに8年が経過しました。ようやく、土壌汚染対策法を前提とする土壌汚染判例が蓄積されるようになってきました。

私も最近は、日頃の法律相談や自治体の審議会などでも、土地に関する事案であれば、土壌汚染を思考の射程に入れるようにしています。


このページのトップへ


Copyright (c) 2011 赤津法律事務所 ALL Rights Reaserved