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2012年4月26日

下水道への接続義務の判例    安倍川製紙事件

環境法といっても広いので、すべての法律や判例を知っているわけではありません(ゴメンナサイ)。

 行政の方や利害のある経営者の方のほうがよく知っておられることも多いです。この判例も、経営者の方から教えていただきました。おそらく環境法学者でも知らないかもしれません。とても興味深い判例です。           (平成13年11月30日 静岡地方裁判所 判例地方自治228号63頁)

 

原告の安倍川製紙は、資本金13億4000万円、静岡市の公共下水道の最大口使用者でした。高騰する下水道料金に堪りかね、自社の排水処理施設で浄化して河川に排水しようとしました。

 

河川など「公共用水域」への排水には、水質汚濁防止法による排水基準規制があります。但し、下水道法の公共下水道及び流域下水道であって終末処理場が設置されているものは、水質汚濁防止法の「公共用水域」ではないので、水質汚濁法の排水基準の規制は受けません。

 

ということは、水質汚濁防止法の排水基準を満たすよう自社処理して河川などへ排水しても、下水道料金を支払って公共下水道へ排水しても、どちらでも良さそうな気がします。

 

ところが下水道法は、第10条で「公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従つて、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない」として、下水道への接続義務を定めています。

しかし、これには但書があります。上記に続いて「ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。」と規定されています。

安倍川製紙は、この但書の許可申請をしました。静岡市はこれを不許可にしたのです。

 

この裁判は、安倍川製紙が、この不許可処分の取消しを求めたものです。(ちなみに、平成16年改正後の行政訴訟法では、この場合に「許可の義務付け訴訟」ができます)

 

裁判の結果は、取消しが認められました。行政訴訟では、滅多に無いことです。

理由は、静岡市の許可についての審査基準のうち、本件で不許可とした理由の基準が合理的でないというものでした。

静岡市の審査基準では、「管理者が特に必要と認める事項」として、(1)放流下水が終末処理場放流水と同等以上の水質であること、(2)放流下水は、排水処理施設等を経由しない、未処理の状態であること、を定めていました。

本件で静岡市が不許可にした理由は、上記(2)です。確かに、一読しただけでは、よく趣旨が判らない規定です。

上記(2)は、民間事業者が設置する排水処理施設の性能や管理に対する行政の不信から規定されたようです。しかし、判例は、具体的な処理水の水質や維持を問題とせず、一律に自社処理水だというだけで不許可にするのは合理性を欠くとして、上記(2)の審査基準は、行政の裁量権の範囲を超えた違法なものと認定しました。

 

行政手続法では、申請に対する処分に際しては、審査基準を具体的に決めなければならないとしています(同法5条)。

この判例は、審査基準が具体的に決められていたとしても、その内容が不合理、不公平なものであれば、その基準自体の違法を裁判所で争えることも教えてくれています。


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