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2012年10月29日

水質汚濁防止法の県の監視(15条)公表(17条)違反が認められた公調委裁定

騒音や地下水汚染などの公害紛争を専門に解決してくれる裁判所以外の国(総務省)の機関として、公害等調整委員会(「公調委」)があります。

公調委の紛争解決方法として、調停はよく知られていますが、他に、裁判所の判決のように公調委の法律的判断を示す「裁定」というものがあります。そのうち「責任裁定」は、公害の損害賠償責任の有無と賠償額について、公調委が法律的判断を行うことによって公害紛争の解決を図る手続です。

 

今年5月11日、公調委は、茨城県神栖市で不法投棄された有機ヒ素化合物(もとは旧陸軍が製造していた毒ガス兵器の原料)が地下水を汚染し、汚染された井戸水を使用、飲用した周辺住民が神経症状や小児の精神遅滞などを発症したという事件について、茨城県に、水質汚濁防止法上の常時監視義務(同法15条)公表義務(同法17条)を怠ったことを理由とする、損害賠償責任を認める責任裁定を出しました。

水質汚濁防止法に関する裁判例は少ないですし、この責任裁定は水質汚濁防止法のこれら条文について、かなり踏み込んだ解釈をしていますので、ご紹介します。

 

事件の発端は、平成15年3月に住民らが使用、飲用する井戸の水から水質基準の450倍のヒ素が検出されたことでした。

これに先立つ平成11年1月までに、茨城県は、専用水道の設置者が行った水質検査によって、周辺の別の井戸(会社の寮)から水質基準の45倍のヒ素が検出された事実を把握していました。しかし、その当時実施した調査では、付近の井戸からヒ素が検出されなかったことから、自然由来の局所的なヒ素汚染と判断し、さらなる原因究明調査や住民への周知といった対応は採られませんでした。

 

本裁定は、水濁法15条に関し、

「常時監視の趣旨にかんがみれば、測定計画に基づく測定結果や、その他の機関・個人からの情報提供を通じて、水濁法の見地から看過できない程度の水質汚濁が発見され、水濁法担当部局がそのことを把握した場合には、監視行為の一内容として、その汚染物質、汚染源、汚染範囲、健康影響の有無等に関する追加調査を行うことが当然に予定されていると言うべきであり、環境庁においても、そのことを前提として(略)(本件各通達を)発出し、基本となる地下水質調査方法を指示していた。」

「都道府県知事が、合理的な理由もないのに、これ(注:環境庁の各通達)に従った調査を実施しなかった場合、その権限不行使は(略)違法となると言うべきである」

水濁法17条に関しては、

「同法17条が「水質の汚濁の状況」を公表することを義務付けており、この点でも、必ずしも測定計画に基づく測定結果のみを公表すれば足りるとは解されないこと、そもそも、汚染が発見された状況によっては、それを直ちに公表するのでなければ、国民の健康保護や生活環境の保全という水濁法の目的を達成することが困難となる場合もあることなどにかんがみれば、同条の公表権限・義務の内容としては、いかなる経緯で水質汚染が発見された場合であっても、水濁法担当部局がそのことを把握し、かつ、その汚染物質の性質や汚染の程度から、住民の健康に影響を及ぼすおそれがあると考えられるときには、同法の趣旨に基づき、速やかに関係機関やその影響が予想される地域の住民に対して、水質汚染に関する情報(汚染物質、濃度、汚染箇所、健康影響の可能性等)を周知することが含まれていると解するのが相当である。また、その場合は、周知の方法も、単に住民が知り得る状態に置けば足りるものではなく、具体的状況に応じて、説明会、チラシ、個別訪問などの手段により、早期かつ確実に情報提供を行うことが求められる。(略)都道府県知事がこうした周知措置を取らなかったことが著しく合理性を欠くと認められるときは、(略)違法となるというべきである。」

と解釈、判断しました。

 

環境法の教科書でも水質汚濁防止法の15条(常時監視)、17条(公表)については、ほとんど詳しい説明はありません。

これは公調委の法律判断ですが、おそらく現在では、裁判所でもほぼ同様の判断になるのではないかと思います。

実務的には重要な解釈、判断だと思うので、ご参考までに。

裁定の概要や裁定書はこちら↓

http://www.soumu.go.jp/kouchoi/activity/kamisu_hiso.html


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