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2013年6月27日

不祥事の予防に内部通報制度

大阪市の公正職務審査委員(コンプライアンス委員)をしています。つい先日、マスコミ報道のあった件もありましたが、これのコメントはしないでおきますね。

 

私の修習同期で、内部通報や内部統制のプロともいうべき山口利昭弁護士が、「内部告発・内部通報ーその「光」と「影」ー」(現代産業選書 財団法人経済産業調査会)を書いています。

企業法務の観点から、最近の状況を踏まえて、内部通報制度を整備、運用する意義、公益通報者保護法の内容や問題点 を、具体的な不祥事事例や裁判例を交え、わかりやすく書いています。

 

「内部告発」とは、社外(マスコミや行政機関)に対する通報、「内部通報」とは社内(ヘルプライン窓口)に対する通報、で、目的や機能が違うという指摘は、そのとおりだと思います。

「内部告発」「内部通報」については、2004年に成立、施行された「公益通報者保護法」があります。この法律の目的は、内部告発をした労働者(派遣労働者も)を、報復的な解雇や不当取扱いから保護することにあります。 企業の法令順守(コンプライアンス)を直接の目的とした法律ではありません。

「公益通報者保護法」では、通報対象事実、すなわち、「違法」の根拠となる法律が同法別表で限定列挙されています。実際には、労働者が「これダメでしょ」と考えても、それがこれらの法律に該当するかどうか、素人がちゃんと判断するのは難しいですよね。

なお、この法律では匿名の通報は保護されません。通報者自身が利得する、あるいは誰を害するなどの不正目的での通報も、保護されません。

そして、この法律は、通報先が、社内窓口、監督行政機関、マスコミなどの外部、となるにしたがって、保護される要件を厳格にしています(これは詳しく書いていると難しいので省略しますね)。

 

これに対して、企業の内部通報制度は、コンプライアンスを目的とし、自浄能力の制度とすべきです。 匿名でも、多少の不正目的でも広く受け付け、対象事実も通報できる主体もなるべく広くとるほうが良いでしょう。不祥事の種は、小さい芽のうちに社内で拾い上げ、ちゃんと摘み取って社風を浄化するということです。

つまり、制度構築においては、

・匿名通報も受け付ける

・通報者の範囲はなるべく広く(元従業員や関連会社従業員も含むが従業員本人に限定が良い)

・通報対象事実もなるべく広く(違法に限らず、ヒヤリハット、??のレベルで、なるべく小さいうち、  早い段階で拾い上げられるようにする)

・不正目的でも受け付ける、

次に、制度の運用では、いきなり外部へ「告発」されないように、社内窓口とその処理対応に対する従業員からの「信頼」がもっとも肝要です。

具体的には

・制度構築時に周知徹底(窓口担当者の「顔」が見えるようなPRとか)するのはもちろん、その後も継続的に周知に心がけること(たとえば、給与明細表に連絡先を記載するとか)

・「構築」よりもその後の「運用」がずっと大事で、難しい。通報を受けたのに放ったらかしにしたり、うやむやにしたりなどは言語道断! 通報者への報告や応答を丁寧にして、「ちゃんと対応してくれた」という信頼、これからも「通報すればちゃんと対応してもらえる」という信頼、を常に磨き続けること

です。

 

ついでに、同期の好(よしみ)で、山口弁護士自身が当事者の方々と一緒になって作り、運用して何度も手直ししているという、学校法人のサイトを教えてもらいました↓

http://www.otemon.jp/kansa/koueki/index.html

 

公益通報者保護法のきっかけになったのは、運送業界のヤミカルテルを告発した「トナミ運輸事件」の裁判闘争と言われています。告発者は長年にわたり、会社ぐるみで執拗かつ陰湿な「報復」を受けました。

ちなみに、労働事件の場合、裁判の事件名として会社名が歴史に記録されてしまうので、「反省」して「社風改善」しても、ブラックなイメージが残ってしまいます。気を付けたいですね。


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