人も自然も輝く未来に

ブログ

2015年4月13日

借金は遺産?

最近、相続に関するご相談やご依頼を受けることが多くなりました。高齢化社会を感じます。

 ところで、亡くなった方(法律用語で「被相続人」といいます)の借金は、「遺産」でしょうか?

民法は、相続の一般的効力(896条)として「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と言っています。そして、この承継は、包括承継と言われていて、被相続人の財産上の法律的地位をそのまま丸ごと承継すると説明されています。

ですから、借金ももちろん、相続放棄しない限り、相続人に承継されるわけです。

 

ただ、相続する人(相続人といいます)が複数人いるときは、注意が必要です。

判例は、共同相続(相続人が複数人いる場合です)される金銭債務(借金)について、相続開始(被相続人の死亡)と同時に当然に共同相続人に法定相続分に応じて分割帰属する、としています。理由は、民法が債務者複数の場合(借金を共同相続した場合もこれに当たります)に分割債務を原則としている(427条)からのようです。

すなわち、被相続人(Aさん)が自宅土地建物の他に、1000万円の住宅ローンを残して亡くなった場合、相続人が子2人(長男B、長女C)なら、BさんとCさんはそれぞれ500万円づつの住宅ローンを負うことになります。

 

では、遺言で借金の引き受け者を決めておけばよいでしょうか?

残念ながら、遺言はAさんの単独行為(一人でできる法律行為)なので、債権者が承諾していない以上、債権者は遺言の内容に関わらず、BさんCさんにそれぞれ500万円づつの請求ができます。

Aさんの遺言書に、自宅土地建物と住宅ローン全額は長男Bに承継させる、と書いてあるとしましょう。

自宅土地建物は、この遺言書によってBさんが取得します。

が、住宅ローンのほうは、ローン会社との関係で、Cさんも500万円を支払わねばなりません。

 

Cさんはどうすればよいでしょうか?

結局、Bさんと話し合ってBさんに全額引き受けを承諾してもらったうえ、住宅ローン会社にも承諾してもらう必要があります。

Bさんと話し合って、遺産分割協議書を作成するだけでは足りません。上記の判例があるので、借金は遺産分割協議の対象外とされているからです。

家庭裁判所の実務でも、相続人全員が合意してはじめて、遺産分割の調停で借金も含めて話し合うことができます。その場合でも、調停を成立させる際には、予め債権者(住宅ローン会社)の承諾をもらっておかなければなりません。

 

この関係は、上記の例で、自宅土地建物に住宅ローンのための抵当権設定がされていた場合も同じです。抵当権等の担保物権と、担保対象である債務(この場合の住宅ローン)は法律的に別物だからです。

上記Aさんの遺言の場合、自宅土地に住宅ローンのための抵当権が設定されていれば、Bさんは自宅土地建物の所有権とともに、抵当権の負担(競売リスク)を負います(こういう関係を「物上保証」といいます)が、住宅ローン債務については、Cさんも500万円を負うことになります。

 

一般には、相続すなわち包括承継、と理解されているので、金銭債務に関するこのような判例の考え方は、普通の方にはなかなか納得しがたいだろうと思います。

その分、遺言書をつくるときや、遺産分割の話し合いをするときには、注意が必要です。


このページのトップへ


Copyright (c) 2011 赤津法律事務所 ALL Rights Reaserved