人も自然も輝く未来に

ブログ

2015年2月9日

騒音苦情への対応

先日、大阪府が市町村担当者を集めて開催した「騒音振動研修会」で講演しました。

「共生の理念を騒音問題の解決にも」と題して、地域に住まう方々(中小企業も含め)の相互理解を深めることで、騒音紛争を円満に解決できないか、という趣旨をお話ししました。

 

「騒音」の定義は面白くて、音の大きさ(専門的には「音圧レベル」と言ってdB(デシベル)で表します)もさることながら、聞かされる側にとって「不快」な音とされています。とても個人的で主観的な定義なのです。幼い娘が弾くつたないピアノの音も、親にとってみれば愛らしく響き、不仲な隣家の住人にとっては、忌まわしい騒音というわけです。最近では、風力発電の風車の騒音が問題になっていますが、市民発電が進んでいる欧米では、風車の周囲の住民はたいてい出資者なので、風車のブンブンという音も、打ち出の小槌の音のように聞こえるのだそうです。

 

この講演をお引き受けした理由は、現場の担当者の方々に是非ご紹介したい事例があったからです。大阪市内の下町、木造家屋密集地で金属加工業を営んでおられるA社さんの事例です。

ある朝、A社長さんは近所の方から、最近お宅の機械がうるさいよ、を苦情を受けました。それまでそんな苦情は受けていなかったので、A社長さんは落ち着いて、先ずはその方の話を良く聞いてみました。するとどうも、コンプレッサーの稼働音が確かに少し違うようです。A社長は早速、メンテナンス業者さんを呼んで、調べてもらいました。すると、なんと、確かにコンプレッサーに小さな異状が見つかり、そのまま放っておいたら大きな故障に繋がるところだったそうです。A社長さん曰く、中小企業も地域の一市民として日頃から地域の方との付き合いを大切にしなければならない、近所からの苦情を「苦情」とマイナスに受け止めず、自社の操業状態に対する大切なアラーム、と考えて、誠実に対応するようにしています、とのことでした。

 

これと対照的な事例も報告されました。B社は田畑と住居が混在する地域に立地する比較的大きな工場ですが、何人かの近隣住民から、夜うるさくて眠れない、との苦情を受けました。B社長さんも、誠実に対応しようとし、機械の調整にかなりの費用を注ぎ込みました。しかし、近所からの苦情は止みません。B社長さんはやむを得ず、顧問弁護士に相談したところ、顧問弁護士から、今後は会社自身で対応しないように、と指導され、それ以後は近隣住民に対し、直接の門戸を閉ざしてしまいました。勝手な憶測ですが、おそらくB社顧問弁護士は近隣住民からの苦情に対し、クレーマー扱い同様の対応しているものと想像されます。

 

B社さんの場合、複数の近隣住民から苦情を受けているのですから、音(低周波音も含め)の原因究明をもっと専門的、徹底的にすれば良かったのでは、と思われます。機械メーカーも巻き込んでの対応検討もできたのではないでしょうか。

弁護士も、一般の弁護士は騒音問題や騒音紛争に詳しくないので、ともすればクレーマー対応として処理しがちです。しかし、その結果、そこで操業を続けなければならない依頼者企業にとっては、さらに辛い状況に追い込まれることになりかねません。聞くだに辛い報告でした。

 

東大阪市が昨年4月、「住工共生のまちづくり条例」を制定しました。資料で見る限り、私が言いたかった趣旨と同じなのではないかかと思います。

今まだこの条例がどれくらい動いているのか詳しいことは知らないのですが、是非、成功してほしいと期待しています。

どんな社長さんも、近所から苦情を受ければ「ムッ」とすると思います。でもそこは、グッと我慢して発想の転換、そうすれば違う道が開けるかもしれません。


このページのトップへ


Copyright (c) 2011 赤津法律事務所 ALL Rights Reaserved