
2015年3月16日
先月末、NPO土壌汚染対策コンソーシアム(CSCC)の主催する土壌汚染対策普及啓発セミナーで、最近の土壌汚染に関する裁判例を紹介、解説しました。
最近は、土壌汚染も一般的な不動産のリスクとなっていますので、そのうちの裁判事例から一つ、紹介します。
原告Xさん(裁判を起こした人)は、土地所有者さんで、その所有する土地を昭和30年代からある会社(Y社)に貸していました。Y社はその土地で、クリーニング業を行っていました。
さて、クリーニング業をしていたY社は、廃業してしまいました。その後、Xさんは、市から、土地所有者として、土壌汚染調査をして120日以内に報告するように通知されました。
裁判の主な争点は、市の「通知」が行政処分かどうかという点だったのですが、原告Xさんの主な不満は、自分が汚染したわけでもないのに、土地所有者というだけで調査義務が課せられるのか、だったと思います。ちなみに、土壌汚染の調査は、数百万から数千万円かかる高額な負担です。
しかし、土壌汚染対策法では、第1次的に土地所有者に汚染調査義務が課せられており、土地を貸していただけのXさんには本当にお気の毒なことだと思いますが、これを裁判所で争ってもほぼ勝ち目はないと思われます。
土壌汚染対策法は、先ず全国にどれくらいの汚染土地があるのか、それを把握することも目的としており、いろいろ議論もありましたが、その調査義務を第一次的に「土地の所有者、管理者又は占有者」(土地所有者等)としました。
この理由は、「状態責任」と説明されています。汚染者負担原則(PPP)が環境法の原則ですが、これは少し例外的です。「状態責任」とは、周囲に健康被害を及ぼすかもしれない危険な財物を所有していること自体からくる責任、という考え方です。実質的には、汚染調査はボーリング調査など土地を掘削しなければならないため、所有者でなければなしえないということもあります。
いずれにせよ、まだまだ一般の土地所有者の方々には、納得しがたいかもしれません。
Xさんの場合、Y社が廃業するときに、きちんと手立てを打っておくべきでした。
すでに土壌汚染は不動産取引の一般的常識的リスクとなっています。売買だけでなく、賃貸、担保権設定の場合も常に念頭におくべきものです。
特に、クリーニング業、メッキ工場、ガソリンスタンド、化学薬品を使う洗浄施設、などの使用履歴がある土地の場合は、注意が必要です。
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