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2017年8月3日

「事前復興」という考え方

先週、弁護士会(近畿弁護士会連合会)公害対策環境保全委員会の夏期研修に参加しました。テーマは「災害からの復興と都市・自然環境の保全~南海トラフ巨大地震に備えて~」です。開催地は和歌山市でした。

 

東北震災被災地へ行かれた方は、沿岸部で今も延々と続く巨大土木事業に驚かれたと思います。巨大津波に備えるための、防潮堤の建設と市街地の高台移転の土木事業です。

通常、このような巨大土木事業には、環境保全のため、環境影響評価(環境アセスメント)法が適用されます。事前の環境調査、事業の環境に対する影響の予測、代替案との比較検討も含めた評価、が、情報公開と住民参加のもとに、為されたうえでないと、事業を進めることができません。

しかし、災害復旧事業に関しては、環境影響評価法で適用除外(同法52条)とされています。今、被災地で進められている巨大土木事業も、住民参加や情報公開がないままに進められています(住民の努力による例外もあります)。

 

確かに、災害復旧事業は、被災住民の命や健康を守るため、緊急を要します。時間のかかる環境アセスメントなどしてられるか!というのも・・・わかります。

でも、いったん巨大構造物や街のかたちが造られてしまうと、数十年以上は変えられません。破壊された自然環境も、取り返しがつかないことも、あります。

 

そこで、ほぼ確実に予測される大規模災害に備え、万一それが発生した後の復興をどのように行うのか、事前に計画しておく、という「事前復興」という考え方が、阪神・淡路大震災の経験から生まれました。

実際、東京都(都市整備局)は、首都直下地震に備えた事前復興の取り組みを公表しています。震災復興グランドデザインや震災復興マニュアルを策定して、ホームページなどで周知に努めています。

 

「『もとの街』に復興したい」という住民の願いは同じでも、住民ひとりひとりの「もとの街」の具体的イメージは、実はバラバラです。被災後に「もとの街」議論に時間を費やしている余裕はありません。だから、被災前の今こそ、復興でめざす「もとの街」イメージを、ある程度具体的な形にして、住民で共有しておく必要があるのです。

 

津波被災地で建設されている巨大防潮堤は、150年に一度の程度(レベル1)の津波には耐えられるように、設計されています。しかし、今回のマグニチュード9以上の過去最大クラス(レベル2)の津波には、無理です。

市街地の高台移転は、レベル2の津波を想定しています。

防潮堤の背後には、広大な「災害危険区域」が広がります。農地利用や工場誘致が予定されていますが、なかなか進んでいません。

 

日本列島の地殻は、阪神淡路大地震以降、活動期に入ったといわれています。地球温暖化の影響と思われる異常気象も、激しさを増しています。

今年の集中豪雨の多発にみられるように、想定すべき災害は、震災津波ばかりではありません。

数千年に一度の過去最大津波に備えて高台移転した場所は、数百年に一度の集中豪雨や洪水には、大丈夫なのでしょうか?

「もとの街」で守りたいもの、守るべきものは何か。

事前復興は、地域の「あるもの探し」(地域の資源や魅力の掘り起こし、再発見)でもあります。

 

ところで、大阪府や大阪市は、大丈夫でしょうか?

カジノや万博に浮かれてないで、事前復興にも、ちゃんと取り組んでもらいたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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