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2018年6月25日

有期契約社員に対する「不合理な」差別(最近の最高裁判例を解説)

6月1日、有期契約労働者に対する賃金について、重要な最高裁判例が2つ出ました。定年後再雇用有期契約(継続雇用制度)労働者の事案(長澤運輸事件)と通常の有形契約(非正規契約社員)労働者の事案(ハマキョウレックス事件)で、いずれも業務内容は運転手です。

 

いずれも労働契約法20条の解釈適用が問題になりました。

労働契約法20条は、同一の使用者の下で、有期契約労働者と無期契約労働者で労働条件に相違がある場合に、その相異が、有期と無期という違いに伴う業務内容や責任程度の違いや配置変更範囲の違い「その他の事情」から見て、不合理なものであってはならない、旨、定めています。

 

ハマキョウレックス事件の場合、契約社員には、正社員には支給される、賞与、退職金、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、家族手当、が無く、通勤手当も差があり、定期昇給も原則ありませんでした。他方、業務内容や責任程度に正社員との違いはありませんでしたが、正社員のように全国規模の広域異動は予定されていませんでした。

 

長澤運輸事件の場合、定年後再雇用の嘱託社員は、賞与や退職金も無く、諸手当が無くなったことで賃金総額は定年前より約2割減となり、精勤手当が無くなって、同手当を含む超勤手当も減りました。他方、業務内容や責任程度に定年前と違いは無く、配置変更の範囲でも違いはありませんでした。

 

 

最高裁は、労働契約法20条の「不合理禁止」の法的効果として、不合理な労働条件の部分は違法で無効となるが、その部分が対応する無期契約労働条件で埋め合わされるわけではない、と解釈しました。

これを前提に両事件とも、正社員同等の地位確認請求、と、正社員同等の賃金との差額(未払分)請求、は認めませんでした。

ただ、違法無効な労働条件による損害賠償請求として、諸手当の趣旨目的を個別に検討したうえで、ハマキョウレックス事件では原審(大阪高裁)が認めなかった(合理的と判断した)住宅手当と皆勤手当のうち皆勤手当分を、長澤運輸事件では精勤手当分とこれにもとづく超勤手当分を、認めました。

 

 

注目されるのは、長澤運輸事件において、定年後再雇用であることが労働契約法20条の「その他の事情」に当たる、との解釈が示されたことです。

これを以て、定年後再雇用なら同一労働のままでも労働条件切り下げ可能、との受け止めもあるようですが、即断は禁物です。

 

上述したように、長澤運輸事件の賃金総額減額率は約2割です。また、長澤運輸が団体交渉を受け、嘱託乗務員の賃金格差を縮める努力をしたこと、が原審(東京高裁)判決で評価されています。老齢厚生年金の受給予定やその間の調整給の支給も重要な判断要素になっています。

 

自社の嘱託社員(定年後継続雇用制度による有期契約社員)の労働条件について、長澤運輸の事案と比較検討されることをお勧めします。

 

賞与についても、長澤運輸事件では、定年退職金を受けたことや老齢厚生年金の受給予定やその間の調整給支給、賃金減額率が約2割であること、を理由に不合理性が否定されましたが、ハマキョウレックス事件では、損害賠償請求の対象に含まれていなかったため、判断されていません。

 

 

非正規差別の是正は、労働契約法のもとで進められています。

労働契約法は、2007(平成19)年成立、翌2008(平成20)年施行の比較的新しい法律ですが、労働基準法が労働条件の最低限(ミニマム)を画するのに対し、労働契約法は最高裁判例の到達点を踏まえた労働条件の基準(スタンダード)を定めています。

労働契約法とその判例にも注意を払うようにして下さい。

 

 

 


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