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2019年9月13日

経営者保証を考える(民法改正で残された課題)

改正民法(債権法)が来年4月から施行されるのを前に、大阪弁護士会では会員向けの連続講座が行われています。先日のテーマは「保証」でした。今回の「保証」改正の主要な問題意識は、経営者保証でもありました。

 

法律家、特に弁護士には、保証人の制度(慣習?)に「野蛮」な印象(イメージ)を持っている人も少なくないと思います。講学的(お勉強用語)には、不動産抵当権などを「物的担保」と呼ぶのに対して、保証人は「人的担保」と呼ばれます。

まさに、『人質』です。

物的担保は、目的物の交換価値(いくらで売れるか)を把握するものなので、物の評価が重要です。ただ、評価は金銭的価値への換算なので、その評価は科学的で客観的であるのが普通です。

これに比べ、人的担保が把握するのは、保証人の「信用」です。人柄も含めた「信用」を科学的かつ客観的に計測する方法は、今のところ、ありません。なので、実情としては、保証契約の成否に関係者(債権者、債務者、保証人)の人間関係、もっといえば力関係、が大きく反映されることになります。

人権尊重と公正公平を旨とする近代市民法の世界に在って、保証契約の何とも非科学的で権力的なところが、弁護士には違和感があり、「野蛮」と感じさせるのだと思います。

 

保証契約のなかでも、その野蛮な前近代性を遺していたのが、「根保証契約」、特に「包括根保証契約」です。

「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を「根保証契約」といいます(改正民法465条の2)。

経営者保証も信用保証の一形態として、根保証契約に属します。

弁護士になりたての頃、信用金庫に対する無期限(期間制限なし)無制限(極度額の限度なし)の経営者保証の事件を受けました。すでにその頃、判例はこのような「包括根保証」を制限する解釈を示していたため、内容証明郵便で支払拒絶を回答したところ、結局、信用金庫が請求を諦め、とっても感謝していただいた思い出があります。

 

「包括根保証」に対する改正は、先ず、平成16(2004)年に「貸金等根保証契約」に限って、契約の書面化、極度額、期間制限、の保証人保護規定が設けられました。

平成18(2006)年3月には、中小企業庁が「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」を示しました。

そして、平成25(2013)年12月、「経営者保証ガイドライン」が公表され、金融庁もこれを「主要行向けの総合的な監督指針」のうちに組み入れました。

今回の民法改正は、このような流れを受けての、保証契約、特に、根保証契約における、さらなる保証人保護、が期待されていました。

 

今回の民法改正で、「貸金等」に限定されていた根保証契約は、保証人が法人でない「個人根保証契約」に拡充されました。

事業債務の第三者保証に関しては、「事業に係る債務についての保証契約の特則」が設けられ、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」と「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証」を対象として、これらに、事前の公正証書による保証債務履行の意思確認、が義務付けられました。この公正証書は「保証意思宣明公正証書」と呼ばれます。

法務省はこの公正証書の作成などに関して詳細な通達(下記サイト)を出しています。

「民法の一部を改正する法律の施行に伴う公証事務の取扱いについて」

http://www.moj.go.jp/content/001301748.pdf

これで、事業債務の第三者保証は事実上、正規の金融業界では絶滅すると思います。

 

 

ところが、いわゆる「経営者保証」については、「事業に係る債務の特則」の特則として、保証意思宣明公正証書の適用除外にされてしまいました。

「民法465条の9」の規定です。

 

保証意思宣明公正証書が不要とされる「経営者」保証人は、次の方々です。

第1項 理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者

←これらは形式的に判断されます。

第2項

イ 総株主の議決権の過半数を有する者

ロ 総株主の議決権の過半数を有する株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

←これらも形式的に判断されます。

(ハと二はややこしいので省略)

第3項 法人以外の主たる債務者と共同して事業を行う者、又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

 

 

経営者保証が事業債務保証の例外とされた趣旨は、「(主債務者が)自分の会社なのだから」ということだそうです。

そして、経営者保証のルールについては、関係者の自主的自律的な「経営者保証ガイドライン」にお任せします、ということなのでしょうね。

 

個人事業者の配偶者を「保証意思宣明公正証書」の適用除外にした(民法465条の9 第3項)ことには、学者や実務家の大勢が反対したそうです。

これを入れるよう強く主張したのは、他ならぬ中小企業団体自身だったそうです。いちいち保証意思宣明公正証書の作成が必要になるのでは、パパママショップのような個人事業者が金融機関から融資を受けられなくなる、というのがその理由だったそうです。

う~ん、考えさせられますね。

結局、マイクロファイナンスこそ事業性評価が必要なのに、我が国ではそれが全然出来てない、ということなのですね。

 

 

 

 

 


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