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2019年1月28日

改正民法の哲学的解説 その1 理念

 

改正民法の施行が、いよいよ来年4月に迫ってきました。

当事務所の顧問先さまには、以前に作成させていただいた基本取引契約書など、今年の夏頃から随時、改正民法に合わせた見直しをさせていただきますね。

 

ところで、今回の改正が『民法(債権法)改正』と表記されていることに、気づかれていましたか?

「債権法」って何? 民法の部分?

先ず、そこから解説しますね。

 

法律を分類するのに、「公法」と「私法」という分け方があります。

「公法」は、国家権力と私人の関係を規律する法で、憲法や行政法が典型的です。

「私法」は、私人と私人の関係を規律する法で、民法はそのもっとも基本的な法律(一般法)とされています。

 

私人と私人との関係について、民法は、日々の生活(衣食住、広い意味での経済活動、取引)に関する場面、と、血族や親族のつながり(「身分」といいます)に関する場面、に大きく分け、生活関係を規律する部分を「財産法」、身分関係を規律する部分を「家族法」と呼んでいます。

 

さらに、「財産法」(すなわち取引関係の法)について、民法は、およそ人が生活の糧を得ていくのには、結局、人の物(財物、モノ)に対する支配関係、と、人と人とが約束する関係、であると考えました。

 

どうですか?

「えっ!それだけ?」って思われるかもしれませんが・・なるほど確かに、物々交換から貨幣経済に至るまで、およそ経済関係はヒトとモノ、ヒトとヒト、の関係に還元できますよね。

民法の、シンプルで冷徹な「哲学」を感じませんか?

 

「債権法」とは、この「約束」(すなわち「契約」です)を中心とした、財物(モノ)をめぐる人と人との関係を規律する民法の部分をいいます。

 

民法は、近代市民社会の理念を前提にしています。自由、平等、博愛、それが取引行為、経済活動においては、私的自治すなわち自己決定の尊重、になります。国家権力から介入、制約されず、私人が己の能力と意思だけを拠り所に自由に取引をすれば、その自由が保障されれば、ひいては社会全体としても最大限の付加価値を生み出し得る、と考えるわけです。

 

今回の「債権法」改正は、一言でいえば、この私的自治・自己決定の尊重、を従前よりさらに推し進めようという理念に拠っています。

改正前の旧民法、特にその通説的解釈論(我妻説)は、当事者のナマの行為に対して、補充的あるいは後見的な解釈を入れて、客観的に合理的な法律行為に解釈することで、合理的で相当な結論に導く可能性を予定していたとも言えます。

これに対して今回の改正は、当事者の法律行為はそのまま、当事者が主観的に求めたことは何かを先ず以て追及すべき、という態度を前提にしています。

 

山本敬三京大法科大学院教授によれば、我妻説の時代は未整備の市場を前提にせざるを得なかったが、現代の市場取引を前提とするなら、契約解釈には当事者が求めていた目的物の「性質」も含めて考慮しなければ、却って経済活動に支障が生じる、という事情があるそうです。

 

言ってみれば、うっかり考えないままに契約してももしかしたら助けてもらえるかもしれないという期待より、いつも思い通りになるとは限らない不自由のほうがゼッタイ嫌、ということでしょうか。

 

いずれにしても、改正民法では、自己決定の尊重度も増しますが、自己責任の重みも増えます。

契約書を作成することは最低必要条件のみならず、その内容には、想定されうるすべてのリスクへの対応を盛り込む必要があります。

さらに、契約書そのものだけでなく、それに至るまでの交渉経過や細かいやりとりなども、すべて書面化(記録化)して、後日の「当事者の契約意思内容」の立証に備えることも必要になります。

 

いつの時代も、大きな「自由」にはそれに応じた大きな「責任」と「負担」が求められるのですね。

 

 

 

 

 

 


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