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2019年6月10日

中小企業憲章 知っていますか?

今、経産省・中小企業庁が、「中小企業の日」の制定を検討しています。候補日は7月だそうです。休日が増える?わけではなさそうです。

国連ではすでに2017年、6月27日を「中小企業の日」に制定したそうです。なぁんだ、やっぱり「外圧」? と思いますが、制定には賛成です。

 

国は、2010年6月に「中小企業憲章」を閣議決定しています。当時は民主党政権でした。民主党政権に、EU小企業憲章を教えたのは、他ならぬ中小企業家同友会でした。中小企業家同友会は2008年、EU小企業憲章をテーマにヨーロッパ視察を行いました。私もその視察団に参加しました。

 

EU小企業憲章は、2000年6月にEU理事会で採択されましたが、同年3月にリスボンで開催されたEU特別理事会の、雇用拡大と経済社会改革推進のためのEU目標がもとになっています。

 

EU小企業憲章の翻訳全文は、中小企業家同友会全国協議会のHPに掲載されています。前文から抜粋しますね。

『小企業はヨーロッパ経済の背骨である。小企業は雇用の主要な源泉であり、ビジネス・アイディアを産み育てる大地である。小企業が最優先の政策課題に据えられてはじめて、“新しい経済”の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶだろう。』

『EUが世界で最も競争的でダイナミックな知識に基礎を置いた経済となり、持続可能な経済成長、より多くより良い雇用の創出、より強固な社会的結束を可能にするということである』

どうですか?格調高い感動的な文章ですよね。

我が国の中小企業憲章も、EU小企業憲章を中小企業家同友会に教えてくださった三井逸友教授も関わられて策定されたので、内容や中小企業の位置付けは、EU小企業憲章とほぼ同じです。

 

ただ私は、EU小企業憲章には、ヨーロッパらしい「したたかさ」を感じます。

EU小企業の「動機」は、「雇用の確保」です。大企業は毎年、何百人、何千人と採用するものの、リストラとなれば何千人、何万人と解雇します。それよりも、何千社、何万社の中小企業が一人、数人と採用し、雇用し続ければ、そのほうが、社会(特に地域社会)の安定に資する、というわけです。これは我が国の中小企業憲章もまったく同じです。

私が着目したのは、「新しい経済の到来」「世界で最も競争的でダイナミックな知識に基礎を置いた経済」と言っているところです。2008年頃、私は、弁護士会も含めて、ヨーロッパに数回は視察に行きました。そこで私に垣間見えた「新しい経済の到来」「世界で最も競争的でダイナミックな知識に基礎を置いた経済」とは、ズバリ、IT(+知識産業)と再生可能エネルギー、です。

いずれも中小企業に活躍の可能性がある分野です。ヨーロッパは単に、小企業を保護?して雇用を確保しなければ、と健気に考えているわけでなく、小企業憲章をバネに、多様で国際競争力ある産業と地域経済を育成する、ことを大胆に戦略宣言しているように、私には読めます。

 

EU視察で、耳にタコができるくらい強調されたスローガンが、「Think Small First」(小企業を最優先に考える)でした。これは決して、小企業を最優先で優遇しよう、というのではありません。すべての政策、施策を立案する際に、それによって小企業が被る影響を第1順位で検討する、いわば、リスクアセスメント第1順位者、ということです。甘やかすのではなく、不当な施策で無駄に被害を被らせない、ということです。

 

中小企業家同友会では、2010年にアメリカ合衆国にも中小企業政策事情の視察に行きました。SBA(アメリカ合衆国の中小企業庁)のヒアリングで強調されたのは、「Listen」(中小企業の声を聴く)でした。大企業の国と思われているアメリカですが、ダブルスタンダードはこの国の得意技らしく、国内ではむしろ中小企業の保護・育成や地域経済の振興、パパママショップの保護まで、充実していました。

 

私の勝手な政治風土色分けでは、ヨーロッパはエリート指導、アメリカはパワーバランス、と見ています。日本はその中間でしょうか。

EUのThink Small First、アメリカのListen、は、それぞれのお国柄が良く表れていると思います。

その「中間」を行く日本はどうでしょうか?

私の知る限り、まだ、経済政策立案で第1に影響を考慮される地位も、正当な要求をまとめて政策立案者に届ける力も、日本の中小企業は得られていないように思います。

さらに言えば、ITも再エネも、日本が世界に遅れかけているのでは?と懸念される分野です。

 

京都大学の岡田知弘教授によれば、我が国で中小企業憲章を具体化、実現する3要素は、1)現状調査・分析 → 2)自治体による中小企業振興基本条例の制定 → 3)地域の中小企業を主役とする協議会の運用、だそうです。

今、政府は、後継者難による中小企業の廃業(黒字廃業も)によって、中小企業数が半減する、と予測し、危機感を募らせています。しかし、実際に各自治体は、その行政区域内の中小企業の実態をどれだけ把握しているでしょうか?

中小企業振興基本条例も、型どおりの条例を議会で通して成立させただけでは、まさに「仏作って魂入れず」ですよね。

地域で地元中小企業家が主体的に運営する協議会も、どれだけの自治体で実現しているのでしょうか?

 

「中小企業の日」大賛成です。

でも、記念日だけ作ってもらって喜んでいるだけでは、日本の未来はありません。

 

 


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