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2020年6月24日

民事裁判手続きのIT化、始まります

日本政府は新型コロナウイルスに、デジタル後進国の実態を暴露されてしまいましたね。

実は、日本の裁判所も例外ではありません。

世界銀行が毎年発表する ”Doing Business” 2017年版ランキングで、日本の裁判所手続は、世界190か国中48位、OECD 35か国中28位にランクされてしまいました。

日本政府は、内閣官房日本経済再生総合事務局に「裁判手続等のIT化検討会」を立ち上げ、2017年10月から会議を重ね、2018年3月30日「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて―」を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/pdf/report.pdf

さらにその後、未来投資戦略2018(2018年6月15日閣議決定)に基づき、公益社団法人商事法務研究会「民事裁判手続等IT化研究会」で2018年7月から検討が重ねられ、2019年12月「民事裁判手続等IT化研究会報告書 -民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」がまとめられました。

そして今年2月、法制審議会に対し、民事裁判手続のIT化について諮問がなされ、6月から本格審議が始まっています。

先行して、裁判所ではすでに今年2月から、現行法の枠内で可能なIT化(フェーズ1)が始められています。

前記、内閣官房の「取りまとめ」が目指す「3つのe」とは、次のような内容です。

e提出(e-Filing)

・主張や証拠の提出をオンラインに一本化

・手数料の電子納付・電子決済

・訴訟記録を電子記録に一本化

e事件管理(e-CaseManagement)

・主張や証拠へ随時オンラインアクセス

・裁判期日をオンラインで調整

・本人や代理人弁護士が期日の進捗や進行計画を確認

e法廷(e-Coat)

・web会議やテレビ会議の導入・拡大

・口頭弁論期日(初回等)の見直し

・争点整理段階におけるITツールの活用

そして、この3つの内容を3段階で進めるとしています。

フェーズ1:現行法の下でのweb会議・テレビ会議等の運用

フェーズ2:民事訴訟法などを改正のうえ、弁論や争点整理手続で運用

フェーズ3:オンライン申立、主張や証拠もオンライン提出、事件管理もオンラインで行う

 

法改正不要、現行法の枠内で運用可能な「フェーズ1」の対象となる手続きは、いわゆる「争点整理手続」です。

民事訴訟は、双方がそれぞれの言い分を出し合う「主張」段階から始まり、双方の言い分が出そろって「争点」が見えてくると、次に「証拠調べ」段階に進みます。

双方が言い分を出し合う「主張」は、公開の法廷で行う(これを「口頭弁論」といいます)のが原則なのですが、公開で、かつ、当事者間に距離がある法廷では、正確なニュアンスや細かい擦り合わせがやりにくいため、和解用の小さい部屋を使って、口頭弁論や証拠調べのための準備として、双方の言い分や証拠の整理をする手続が認められています(民事訴訟法164条以下)。

従来も、一方当事者が遠方(代理人弁護士も遠方)の場合などに、この争点整理手続で、電話会議が利用されていました。

フェーズ1は、電話会議の拡大解釈?として、双方当事者に代理人弁護士が付いている場合に限り、もう少し広い範囲の「争点整理手続」でweb会議(Microsoft社「Teams」)を活用するものです。

すでに今年2月以降、知的財産権関連紛争を専門に扱う知財高裁(東京、大阪)と高裁所在地の各地裁(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松)で導入され始めており、その後、各地裁に広げられる予定です。

私も含め、弁護士の多くは裁判所周辺の「弁護士村」に事務所を構えています。しかし、3eが実現されたら、その必要性もなくなりますね。

裁判の事件記録は、証拠(写真やwebサイト画像もあります)も含めて紙ベースなので、事件記録もすぐに電話帳の厚さと重さになります。3eが実現されれば、事務所の記録棚も終了事件の保管庫も不要になりますね。期日に裁判所へ行くのに、事件記録を持ち運ぶキャリーケース(昔は風呂敷)もお蔵入りになりそうです。

紙ベースなので、裁判所に主張や証拠を提出する方法は、郵便かファックスだったのですが、それもアップロードやチャットに代わります。1階に郵便局が在ることで、当事務所は現在のビルへの入居を決めたのですが、そういうことも変わっていきますね。

新型コロナの緊急事態宣言を受けて、最高裁BCPを盾に事実上休業してしまった裁判所ですが、その反面、IT化の必要性も実感したはずです。大抵の事柄は社会の最後塵を拝す裁判所ですが、今度こそ、少なくとも予定どおり、「3つのe」は実現されていくと思います。

弁護士の仕事のスタイルも大きく変わると思います。私は結構、楽しみにしています。

 

 

 

 


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