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2020年6月25日

コロナ禍の賃貸借契約

新型コロナの感染拡大で、需要が蒸発してしまった業種も多いと思います。政府は第二次補正予算で、テナント賃料が支払えなくなった事業者に「家賃支援給付金」の支給を決めました。しかし、未だ、具体的な申請受付は始まっていないようです。

 

そんな中、法務省民事局が「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた賃貸借契約の当事者の皆様へ ~賃貸借契約についての基本的なルール~」を公表しました。

http://www.moj.go.jp/content/001320302.pdf

思い切って一言でまとめると、「コロナ禍で収入が蒸発して賃料を払えないなら、3か月くらい払えなくても、追い出されたりしないよ」というメッセージです。

 

ポイントは「信頼関係破壊の法理」です。民法に明文の条文はありませんが、判例の蓄積によって形成された、特に居住用や事業用の不動産を目的とする賃貸借契約を解除できるかどうかについての判例法理です。

 

民法の賃貸借の規定は、次のとおりです。

「第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」

「物を使用・収益させること」つまり「使わせること」、と、「賃料を支払うこと」、が、対価関係に立つのが賃貸借契約です。なので、「賃料を支払わないこと」(これは客観的に判断するので、「支払えないこと」も含みます)は、原則は「債務不履行」すなわち契約違反、約束違反になります。民法は契約に関して、債務不履行があれば、相手方は契約を解除できるのを基本的原則としています。

 

ただ、「契約」といっても、物を現金で買う場合(売買の一態様ですね)もあれば、大きなビルの建築を注文する場合(請負の一種になります)もあって、実情や当事者の実需は千差万別です。

賃貸借契約の特徴の一つは、「使わせる」「使う」という、ある程度の期間を想定していて、当事者が契約関係に在る状態が継続的である点です。またさらに、居住用や事業用の不動産の賃貸借契約の場合、借主にはその生活や生業にその不動産を「使う」ことが必要不可欠であるという事情も加わります。

 

そもそも民法は、(基本原則)として「第一条」に、次のとおり規定しています。

1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

 権利の濫用は、これを許さない。

第2項は「信義誠実の原則」といい、特に契約関係には重要な基本原則とされています。

 

そこで、居住用・事業用の不動産の賃貸借契約関係においては、形式的な債務不履行(賃料不払い、無断転貸・譲渡、用法違反、など)が在ったとしても、それが客観的に見て、実質的には借主貸主としての「信頼関係」を破壊する程度に至っていない場合には、借主からの解除請求を認めない、という裁判例が蓄積され、最高裁判例でも認められて、判例法理として確立しています。

 

今回のコロナ禍で、飲食店はじめ多くのテナントが需要蒸発による収入激減に苦しんでいます。「払いたくても払えない」テナントがほとんどだと思います。

官僚的で形式的な法律運用のイメージが強い法務省がこのような資料を公表したことは、私たち弁護士から見ると「画期的」な感じがします。それだけ、経済がひっ迫しているとも言えます。

 

「払いたくても払えない」テナントの経営者の皆さま、ぜひ、勇気を奮って、早く家主さんと交渉を始めるようにして下さい。信頼関係破壊の法理によっても、賃料不払いに適用があるのは通常、三か月くらいまでです。

家主さんだって生活や事業が懸かっている場合もあるので、本当に悪い奴はコロナだってところが、今回のコロナ禍の悲しいところですよね。

こういう時こそ、お互いの事情に耳を傾け、相手の立場も慮る、心の余裕を持ちたいですね。

 

 

 

 

 

 

 


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